雛だらけ
cho-ちゃんは
ポン君の手の中に入れない日々が続きます
ポン君の手の平は
産まれたての雛で溢れているのです
すっかりふて腐れるcho-ちゃんの周りを
何も知らない雛たちは
大きな顔で歩き回ります
あまり傍によると
cho-ちゃんは渾身の力で伸び上がり
容赦のない突きを繰り出します
すると、雛たちは慌てふためいて背を向けます
が、
綺麗さっぱり忘れてしまい
すぐに近寄っては
cho-ちゃんの神経を逆なでします
ポン君は、すっかりお母さんになって叱りますが
雛たちは四方八方
cho-ちゃんは聞く耳持たず
一人で騒いでいます
小さな六つの命の塊りに
家はすっかり賑やかです
夫婦鳥
秋を前に
今度は二羽の錦花鳥が
新婚旅行さながら、ポン君の元へやってきます
すっかり大人の夫婦鳥は
一つ家の中
慌ただしく愛を育みます
ポン君は今までになく、面倒見よく
しきりに巣箱を覗いては
その日の様子をつぶさに
身振り手振りで語ります
ついに
微かなさえずりが耳に届くと
目を見開いて駆け出します
じっと覗き込んでいた顔を真っ赤に染めて
白いcho-ちゃんを抱き上げ
不思議そうに見上げるyuruに声を掛けます
「赤ちゃんできたー!」
cho-ちゃんはシラっと
目もくれず
yuruは首を傾げたままですが
ポン君は一向にお構いなしで
夫婦へ讃歌を捧げます
飛行
女王であるcho-ちゃんは
気紛れにyuruを誘います
美しすぎるからか
駆け引き上手なのか
雄の性なのか
ご褒美に滅法弱く
すっかり虜なってしまって
時に、cho-ちゃんの叱責、露骨な無視にも
飄々と
cho-ちゃんの後ろで
無邪気に飛び跳ねます
じっと見ていたポン君は
得意気に
「可笑しい」と馬鹿にします
でも、yuruが空を力強く羽ばたく時
cho-ちゃんは
女王の冠を落とし
なりふり構わず追い掛けます
その瞬間
yuruは
いっぱしの男になります
yuruの巣作り
yuruは巣作りが大好きです
受け入れたはずのcho-ちゃんの
女王のような気紛れさに
振り回されながらも
しもべさながら
一途に追い続けます
でも、ポン君の手の中にいるうちは
目も心も閉じてしまって
まるで相手にされないので
どこからか咥えた枯草や糸くずを
私に差し出すと
すぐに飛び立ち
次を探しに行きます
cho-ちゃんとの暮らしを夢見ているのでしょうか
一心に探し続ける彼を見ていると
甘くも苦い
遠い日々を想い出します
二つの影
ある日
いつもならすぐに飛び去るcho-ちゃんが
じっとyuruの能天気な踊りを眺めます
彼の耳触りなはずの歌にも
どうやら様子が違います
身をかがめるcho-ちゃん
yuruはすぐさま
白い背中へと羽ばたくと
ずっと望んできたその場所へ辿り着きます
いつも素っ気なかったcho-ちゃんは
ついにyuruの熱意に折れたのでしょうか
いつしか恋心を抱いていたのでしょうか
ポン君は嘆き交じりに
小さなcho-ちゃんを抱き上げます
成鳥
yuruは縞模様
真白いcho-ちゃんとは違い
身体はグレー
腋は濃茶に白の水玉模様
頬はすっかり紅く
大人の雄になりました
拙い恋心
自らへの讃歌
日々磨き上げるべく
歌の練習です
ですが、残念ながら
当のcho-ちゃんの眼中には
器に盛られた食事にしか
興味はありません
yuru
新顔
それから数日後
ポン君は新しい鳥を持って帰ってきました
cho-ちゃんの仲間です
ですが、cho-ちゃんは知らん顔
幼いyuruは鳴くのが仕事
ポン君の生活はまた忙しくなりますが
誰彼なしに
文句を言いながら
あっちに走り
こっちに走り
疲れたと言いながらも
頬を紅めます
yuru