ポン君とcho-ちゃんの日々
cho-ちゃん一人だけの日々は
これからもずっと続きます
でも、いつもポン君が傍にいます
お互い
どれだけ心強いでしょうか
どれだけ救われるでしょうか
誰もが二人のような関係であれば
世の中
時計など必要ないでしょう
困るでしょうか
幸せでしょうか
不満顔や
慌てる人々の姿が思い浮かびます
いつまでも尽きない問い
まるで関係のない二人は
今日も抱き合って眠ります
ポン君の両手の中
白い光を放つ
小さな身体
宝石のよう
シルクの玉のよう
何もかも預けて
信じ切る姿
cho-ちゃんは、まるで全てを知っていて
生まれついたのかもしれません
二人の抱擁は
定めのように
きっと
永遠に続くのでしょう
これでcho-ちゃん物語を終わります。
いままで見て下さった方々、
本当にありがとうございました。
水浴び
cho-ちゃんは
岩とびペンギン
ツンツンと毛を逆立てて誇らしげ
はたまた
ビジュアル・ロッカー気取り
水浴びのはずが
身体は少しも濡れていない
憐れなのか
微笑ましいのか
骨折する前
産まれてこれからずっと
水が怖くて飛び込めず
羽ばたきは少しも水に触れず
それでも、すっかり満足顔のcho-ちゃんは
勢い、飛び上がり
いっぱしに風呂上がりの毛繕いを
ポン君の肩の上
黙々と続けます
変わり様
ポン君と同じ
寝坊助だったcho-ちゃんが
人の気配を感じると
すぐに呼びかけるようになりました
陽を隠す籠の覆いを取ると
もうおねだりは止みません
右に左
上に下
網に脚を喰いこませて
まるで中は監獄か
火の海か
出なければ命はない
勢いに、ついつい出しても
部屋中、止まない飛行
そう、恋しいのはポン君だけ
誰よりも感情豊かで
誰よりもずっと素直
思い遣りや躊躇いは
重い荷物
真直ぐなcho-ちゃんは
ポン君の椅子に舞い降りると
白く光る身体を埋めて
仲間も居ない静かな空間で
寝坊助のポン君をじっと待ちます
完治
二ヶ月の病院通い
やっとのことで
cho-ちゃんの脚はくっつきました
キブスの取れた脚は
少し向きが違い
少しだけ不恰好
ですが
ポン君にとっては
すっかり元通り
cho-ちゃんも
不自由な脚に臆することなく
飛び回れる喜びに溢れます
長かった辛抱の日々
暗い行く末から解放された
あまりに明るい部屋は
反面
命のはかなさが身に染みた今
美しも悲しい光に包まれます
不機嫌な日々
脚の折れたcho-ちゃんの棲家は
少しのジャンプも出来ないほどに
天が降りてきました
がさごそ
がさごそ
脚を引き摺り
右往左往
ポン君の顔を覗き見します
このところ
ポン君は怒ってばかり
cho-ちゃんは
大人しくするどころか
狭い部屋に不平不満
病院では逃げ回り
通いに疲れ果てながらも
したいようにするだけです
またしても餌の時間
大嫌いな薬のため
二人の長い戦いが始まります
にがい薬
翌日
病院から戻ったポン君は
もらってきたお薬を
cho-ちゃんの口元に運びます
ポン君からもらえるものは
美味しいものと決まっています
嬉しい顔は一転
あまりの不味さに
頬は強張り
いつもの、なによりも落ち着く手のひらから
逃がれようと必死です
ポン君は叱りつけ
何度でも、無理やりにも与えます
悲痛な想い
骨折の診断
まるで力の入らない右脚
もし、治らなければ大変です
不思議な顔のcho-ちゃん
ポン君の昂る声は
一人に背負わせるために
行き場なく
ただ戻ってくるだけです
cho-ちゃんの異変
ポン君の目はじっと一点を見つめ
「あれ・・・」
不安の色を滲ませます
「cho-ちゃん?」
白く輝く体
風を切る羽音
時折の潰れた鳴き声
変わった様子はないのに
「こっちおいで」
ポン君は真顔で呼び止めると
「なんか変」
強い口調
「なんか変や」
まるで飲み込めない私に構わず
自問を繰り返します
「片脚おかしい」
素早くcho-ちゃんを抱き上げ
「骨折してるかも」
切実な嘆きで覗き込むと
ポン君の手の平の上、立ちはしていても
cho-ちゃんの体は大きく傾きます
こんなに小さな体の
あまりにもか細い脚
先走る予感を止めようもありません